法務局で見かけたある事例

父は早くに亡くなりましたので、実家には長いこと母が独りで住んでおりました。
その母も数年前に病を得、昨年亡くなりましてからは実家にはもう住む者がおりません。
兄と私とで、相続登記の手続きをするために最寄りの法務局へ出向いた時のことです。
自分たちの届け出をして待っていると、60歳は回っているであろう白髪の男性が窓口にやってきました。
聞くともなく話が聞こえてきます。
彼の言うのには、「この度は自分の父親が亡くなったので土地の名義変更をしなければならないが、調べてみたら家も土地も今もって50年前に亡くなったお祖父さんの名義のままになっている。
ついてはどういった手続きを行えばよいのかご指南いただきたい」といったような内容でした。
係員は対応に困った様子でしたが、彼を奥の部屋へと案内していきました。
聞くところによると、亡くなった方の名義をそのままにしている不動産などはけっこうあるようですね。
ご子孫のためにも、相続登記はすみやかに行っておくべきなのですね。
持ち主が亡くなった場合、不動産は相続人の所有になりますが、自動的に相続人名義に切り替わるということはありません。
これには名義変更の手続きが必要になるのですが、手続きの方法は、不動産登記法に規定されています。従来は、登記申請は法務局に当事者が出頭して行う必要がありましたが、平成17年の法改正以降は、郵送でも申請できるようになりました。
亡くなってから、いつまでに手続きをしなければないらないということは決まっていませんが、しかしできるだけ早い段階での相続登記をおすすめします。相続人も他界して数次に相続が発生するようなことがあると、相続人間の話し合いが不可能になることもあるためです。
もしも処理をしないままである時、その不動産を売却しようとしたとしても、相続登記の手続きをせずに売却は出来ませんし、担保に入れるということも出来ないのです。
相続登記手続きに必要な書類を紹介していきましょう。
まずは亡くなった方の除籍と改製原戸籍と現戸籍の3つを含む出生から死亡までのすべての戸籍謄本と、本籍地の記載された住民票の除票です。除票に記載されている住所と登記されている不動産所有者の住所が異なる場合には、戸籍の附票が必要となる場合もあります。
そして相続人全員の戸籍本と、代理人司法書士を立てる場合は委任状が必要になります。また、戸籍を原本還付するのであれば、相続関係説明図も必要になります。
あとは、遺言があれば遺言書、遺言の方式が自筆証書遺言や秘密証書遺言であれば、家庭裁判所の検認を受けたものである必要があります。
遺産分割協議をした場合には、相続人全員の実印を押印した遺産分割協議書と印鑑証明書が必要です。
そのほか、不動産を取得する人の住民票の写し、不動産の固定資産税評価証明書も用意しましょう。評価証明書は、法務局によっては、名寄せ台帳の写しや納税通知書などで代えることができる場合もあります。
もちろん登記申請書も忘れてはいけません。

最近のブログ記事