2014年6月アーカイブ

家族が亡くなり相続が発生すると、残された財産を相続人の間で分けることになります。
現金や預貯金、株式などの有価証券、土地建物やマンションなどの不動産もあります。
現金はそのまま分けることもできますが、預貯金は遺産分割による請求が必要で、株式は名義変更、土地や建物は相続登記をしなければなりません。
相続が発生した場合、遺産分割が行われるまでは、全ての相続人の共有という状態にあります。
この時点で亡くなった方の所有から、すべての相続人の共有という状態になっており、本来は共有の相続登記が必要です。
もっとも、実際にはこの段階で手続きをする人は少なく、遺産分割協議によって取得する人が決まった段階で手続きするのが一般的です。
ですが、この手続きもしないまま、放置してしまう人もいます。
特に従前通り、その土地や建物に家族として暮らしている場合、自分たちが所有しているのだからと気にしない方もいます。
しかし、いざ売る段階になったり、さらに相続が発生した場合、面倒なことになりますから、早めに相続登記をするのが賢明です。
相続登記をするためには遺産分割協議をまとめることになるのですが、この協議においてしばしば問題となるのが、相続人の一部が被相続人の療養看護に努めたような場合の寄与分についてです。
民法では、遺産分割協議の際には、故人の生前における財産の維持や増加、あるいは上記のように故人を療養看護した場合などには、その後見があったものについては貢献度を考慮して相続分を増加させるべきものとされています。
この寄与分が問題となることがよくあります。寄与分は、通常の家事労働などがあった場合には、認められません。あくまでも、特別の寄与が必要です。通常の子の扶養義務(民法877条1項)の範囲内の寄与では相続分の増加は認められません。
子供が無給で親の事業のために尽力した場合などには、寄与分が認められる可能性があります。ただし、寄与分が認められるのは、法定相続人に限られます。たとえば、内縁の妻や、相続人の妻などがいくら故人の介護に尽力していたとしても、寄与分は認められないので注意が必要です。

相続人不存在の場合(最初から存在しない場合や、全相続人が相続放棄をしたような場合)には、相続財産は最終的には国庫に帰属します。国のものになるのです。

その場合、手続きは結構複雑なものになります。この手続きは、相続財産の精算手続きであり、相続財産や相続債務を手続きの中で確定していく必要があるためです。具体的には、相続財産管理人を選任し、官報公告などを行って相続債務を確定し、相続財産から換価・弁済を行います。また、相続人が不存在であることや、特別縁故者がいないことなども、手続きの中で確定していきます。具体的には、次のようなスケジュールとなります。

1、相続財産管理人選任(民法952条)
2、選任の官報公告
3、相続財産管理人による相続財産の調査
4、財産目録の提出
5、相続債権者・受遺者への請求申出の催告・官報公告
6、相続財産の換価
7、相続債務の弁済(相続財産から弁済して剰余が残る場合)
8、相続人捜索の官報公告(民法958条)
9、官報掲載から6ヶ月で、相続人不存在確定
10、特別縁故者への財産分与(民法958条の3)
11、特別縁故者がいない場合には、国庫に帰属する

また、不動産が共有である場合にその共有者の一人が亡くなった場合には、他の共有者に所有権が移転するという、民法255条の規定があります。この規定と、上記民法958条の3に基づく特別縁故者への所有権の移転のどちらが優先的に適用されるのかということが、最高裁で過去に争われたことがあります。結論は、民法958条の3の方が優先されると判示されました(最高裁平成元年11月24日判例)。

不動産が国庫帰属するといっても、具体的にどのような手続きになるのか、少し調べてみますと、次のような取り扱い(相続財産管理人から、財務局に引き継ぐ)のようです。
【平成13年3月30日財理第1265号「物納等不動産事務取扱要領」より、国庫帰属不動産の取扱い】
財務局等は、次の事項を記載した国庫帰属不動産の引継書をもって財産管理人から引継ぐものとする。
(1) 当該財産の所在地・種目・数量・価格
(2) 引継ぎの事由
(3) その他参考となるべき事項
また、財務局等は、動産が不動産と一体的に処理することが適当と認められる場合において、当該財産が所在する区域を管轄する家庭裁判所等と協議のうえ、当該財産を財産管理人から引継ぐものとする。